読書

芦沢央『火のないところに煙は』レビュー|ただ怖い、ただ不思議、ただ謎が解けていくとは違った面白さが味わえる

こんにちは、Nagoya / Nagoyaka log の楓(@kaede_twi)です。

この記事では、
芦沢央(あしざわ・よう)さんの『火のないところに煙は』について、
概要や気になった箇所、感想を書いています。

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感想はネタバレなしバージョンとネタバレありバージョンがあります。
記事のいちばん下にあるネタバレありバージョンは、
本を読んでから目を通してみてください♪

概要とか気になったところとか(ネタバレなし)

この本の主人公である著者のもとに、
「怪談」をテーマとした短編小説の依頼がきたことから物語ははじまります。

ちなみになんで主人公は著者自身かというと、

『許されようとは思いません』という本の再校ゲラを戻し終えたまさにその日だった。

冒頭のこの文中にある、『許されようとは思いません』という本は、
2016年に新潮社から著者の作品名なので、
一応そういう想定で、私は楽しんで読むことにしました。

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今回主人公が依頼された短編小説は、
新潮社のある神楽坂を舞台にした怪談をテーマにしたものでした。

主人公ははじめ、その依頼を辞退するつもりでしたが、
神楽坂という文字を見て、ある過去の出来事について偶然ならざるものを感じ、
向き合うことにしたのでした。

第一話 染み

8年前のある日、
新卒三年目で編集者として働いていた主人公のもとに、
大学時代の友人の瀬戸早樹子さんから連絡があります。

当時主人公が担当していた、
オカルトなどの雑学本を書いていたオカルトライターの榊桔平という人に、
いいお祓いの人を紹介してもらえないかと。

相談の内容は、高校時代の友人が悩まされている、
ある現象について。

その現象に関係すると思われる、
高校時代の友人の彼はなぜ死んでしまったのか、
そして彼女たちは。

主人公はこの話を短編小説として書き、何か知っている人はいないか、
読者に呼びかけることにしました。

第二話 お祓いを頼む女

「染み」が「小説新潮」に掲載された3ヶ月後、
知り合いのフリーライターの鍵田君子さんから電話がありました。

小説の感想とともに、
「染み」のときに呼びかけた情報収集について案じ、
さらに情報を収集するために、ほかにも怪談を書いてはどうかと。

その際に、
君子さんが十年近く前に経験した、ある怪異について話しはじめました。

当時からライターとして働いていた君子さんは、
美容系から恋愛系、ビジネス系、オカルトまで幅広い仕事をするなかで、
君子さんのオカルト特集の記事を読んだという読者から電話がかかってきます。

君子さんはオカルト専門というわけではないし、
名の売れたライターでもない。

なのに相手は、
自分は祟られているのだと、
君子先生にお祓いをお願いしたいと言ってきたのです。

君子さんのもとを訪れる、電話をかけてきた親子。
その人たち祟りの内容とは。

奇妙なやり取りが続くなか、
祟りは予想外のある事実にたどり着きます。

第三話 妄言

オカルトライターの榊さんに、
「ちょうど書く機会を失ったままになっているネタがあるんだけど」と切り出され、
聞くことになったのが塩谷崇史さんが経験したある怪異。

妻と二人暮らしで、家を探していた塩谷さんが、
ある家に内見に行ったところから話は始まります。

そこで出会ったある隣人。

どこか引っかかるやり取り。

、、、違和感はあったもののその家を購入することにしました。

やがてその隣人は、
塩谷さん一家に大きな影響を与える出来事を言い出します。

彼女の言っていることは本当なのか。

第四話 助けてって言ったのに

「妄言」を担当した新潮社校閲部の綿貫さんが、
行きつけの飲み屋で不動産会社勤務の本間さんから、
「実は、今自分が担当している物件でも怪異めいたことが起こっている」
と打ち明けられたのがこの話。

結婚し、義母の住む夫の実家に住むことになった智世さんが、
ある夢を繰り返しみるようになります。

自分が生きたまま、炎に焼かれて死ぬ夢を。

一人で抱えていられなくなった智世さんは、
夫に話します。

その夢は以前は義母が見ていたもので、
その夢はやがてだんだんと変化し、
義母はある言葉を聞き取った時点で、
高熱を出し、生死の境をさまようことになりました。

やがて一家はこの家を手放す決断をするけれど、、、。

第五話 誰かの怪異

千葉県内の大学に通う岩永幹男さんから聞いた話。

四月から一人暮らしをはじめ、
ある古いアパートで暮らしていた。

家賃は安く、条件のいいアパートだったが、
ある日、自分以外の存在を感じさせる出来事があり、
やがてその姿を目撃してしまう。

ひょんなことからそれを友人の中嶋さんに話すことになり、
中嶋さんは高校時代の友人で霊が見えるという岸根さんを、お祓いのために呼んでくる。

しかし、そのお祓いは失敗に終わる。
そこから見えてきたものは、、、。

ここまでは小説新潮に掲載された内容で、
主人公のもとに集まってきた様々なパターンの怪談が続いていきます。

そして最終話の書き下ろし、禁忌
この最終話で衝撃の事実に気づくことになります

最終話 禁忌

主人公が、
単行本にまとめるため、各話のデータを取り寄せて修正をしていました。

その本の書評は榊さんにお願いすることとなり、
榊さんから原稿が返ってきましたが、
その後、原稿を差し替えたいと連絡がありました。

詳細を聞こうとするも、
それには答えず、
予想外の質問をされます。

どうしてこの五つ目の話を書こうと思ったんだ

不安になりながら、
選んだ理由を答える主人公に、

じゃあ、わざとじゃないのか

と答える榊さん。
その言葉の意味はなんなのか。

やがて細部が明らかになるにつれて、
つながっていく出来事と、重なるモチーフ。

そして、近づきてきてしまっているなにか。

衝撃的な事実と謎とともに、物語は静かに終わります。

感想(ネタバレなし)

ただのホラー、ただのミステリーとは違う、
つながってしまうのに、
はっきりとした因果関係がわからない、
そんな不安感が面白いお話です。

主人公は作者のはずで、
ひょっとしたらフィクションなのでは?と思わせる、
現実感のあるエピソード。

そもそも神楽坂という、
やけに狭く、具体的な地名が出てくることも、
どう捉えたらよいのかわからない。

この微妙なさじ加減がプロの仕事って感じですごく面白い本でした!

⇩この下の感想、ネタバレありなので注意してください⇩

芦沢央さんのその他のおすすめ作品

2012年に第3回野生時代フロンティア文学賞を受賞したデビュー作です。

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⇩この下の感想、ネタバレありなので注意してください⇩

感想(ネタバレあり)

この本の表4側のカバーに気づきましたか?!

第一話 染みの「あやまれ。」が再現されている〜〜〜!

本文ではルーペで確認して気づいているので、
もっと小さな文字の想定なのでしょうが、
気づいたときに「ぎゃっ」と思いましたね。

それから、
榊さんは実在の人物じゃないですよね???

最後の文が不穏すぎて、
「どうしよう」という気持ちのまま突然お話が終わってしまい、
怖い話でありがちな取り残された感。。。

あの占い師本人は最後まで登場しないのもまた謎が深まるし、
なんで疑ってはいけないのかという謎もあるし、
あの大きな笑い声も、
どういつもりでそんな怪異の表し方をしているの?って感じで、
謎を解決してくれないところが、
気に障るのに面白いんですよね〜!

ただ怖い、ただ不思議、ただ謎が解けていくとは違った面白さを知りました!

マメナチカ
マメナチカ
急に話がつながったりしてぞくっとくるネ!
楓
つながり方が予想できなくて不意打ちでくるからヤバかったよ!

最後までお読みいただきありがとうございました。