小川糸さんの『つるかめ助産院』を読みました。
小川糸さんのエッセイや物語が好きで、少しずつ読んだり集めたりしているところです。
この作品は10年以上前に出版されたものですが、今回がはじめましての作品でした。
好きな作家の作品で、未読のものが複数あるとかなり安心感があるなと思います(笑)。この点小川糸さんの作品はまだまだ手元にないものが多いので、今後集めていくのが楽しみです。
この作品はタイトルの通り出産がキーワードの、誕生と再生と癒しの物語でした。
主人公・まりあの妊娠発覚から出産を描いた、島や島の人たち、助産院の人たちとの出会いとそこでの交流や暮らしによって再生し育まれていく主人公の心と過去の記憶。
助産院だけあって、妊婦さんや出産の描写が多いのだけど、リアルなようなリアルを超えた世界のような、スピリチュアルのような野性の世界のような。
小川糸さんならではの独特な捉え方で描かれる壮絶な出産シーンややるせない過去に夢中で頁をめくってしまいました。
主人公含め、過去に何かわりと大きな傷を負った人が多く出てきて、哀しみも多いお話なのだけれど、南の島の自然とか、それでもそれぞれに再生し、支え合いながら生きている登場人物たちによって物語全体が温かく優しい。
ちなみに小川糸さんに出産経験はないそうですが、一個人の経験を超えた普遍的な、生き物としての妊娠と誕生が描かれているように感じました。私も経験がないのでアレですけど(笑)
最後の方はけっこう涙しつつ、満足感のある読後感でした。