2011年に出版された江國香織さんの『金平糖の振るところ』を読みました。
江國香織さんの恋愛小説を久しぶりに読んだのですが、やっぱりとてもいいです……。
東京(というか所沢というか)とブエノスアイレスのそれぞれのときの流れの違いのおもしろさ。
姉妹の関係、夫婦の関係、親子の関係、不倫の関係。
さまざまな関係性とそれぞれの愛の形、愛している相手のわかりあえない・まったく知らずにいた素顔の一部。
姉妹にとっての愛するということが、やってることや過去の行いが複雑で、なんだかわかりにくい感じがするのですが、その複雑さこそ無駄に経験を重ねた大人ならではなのかもと思ったり(笑)。
アジェレンの瑞々しくわかりやすい恋愛観とは全く異なる世界で、両方が描かれているからどちらも際立っておもしろい。
ところで私、江國香織さんの小説で出てくるヒロインが好きなんですけど、この物語ででてくる佐和子も好きなタイプでした。
自ら進んで孤独を選びとってしまい、過去や何かに囚われて、幽霊みたいに存在感が薄くなってしまっているふわふわと漂うように生きるひと、そんなひとが意外なタイミングや人物によって引き戻され一歩前に踏み出す感じ。
その踏み出す前の、とらえどころのない暮らしぶりも結構好きで、この作品なら所沢での微妙な豪邸での暮らしぶりとか。『冷静と情熱のあいだ』の本とお風呂ばかりのあおいの暮らしとか。『ホリー・ガーデン』の果歩の感じとか。
もちろんその後、一歩踏み出して自分に正直に恐れから逃げずに生きていく姿に安堵するのですが、その足踏みしてる描写が不思議と美しくて好きなんですよね。
しかし、これだけ主人公が浮世離れしていてもエキセントリックな感じがせず、物語に美しい調和が取れていて、今回も違和感なく読み切ってしまいました。
江國さんの恋愛小説は私にとってはお酒みたいな、一瞬自分を見失って引き込まれ気づいたら飲み終わってるみたいなところがありますね(伝わる?笑)。