寺地はるなさんの『今日のハチミツ、あしたの私』を読みました。
前にも読んだことのある寺地はるなさんの作品ですが、Twitterで本作をお薦めしてくれた方がいて気になっていました。
近頃は図書館で本を借りて読むことが多く、こちらの作品も予約してようやく手元に回ってきました。
(1年半以内に引っ越す予定があるので、ちょっと買うのをためらってしまう今日この頃……)
寺地さんの作品のなかでもこの作品は予約数も多く、人気が浸透している作品なんだなと思いました。
良さそうだという事前情報のみで読み始めてみることに。
今日のハチミツ、あしたの私|作品紹介
蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる──。「明日なんて来なければいい」と思っていた中学生のころ、碧は見知らぬ女の人から小さな蜂蜜の瓶をもらった。それから十六年、三十歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、スナックのママをしているあざみさん……さまざまな人と出会う、かけがえのない日々。心ふるえる長篇小説。
書籍情報 今日のハチミツ、あしたの私 – 角川春樹事務所
今日「みつばちの日」だから『今日のハチミツ、あしたの私』の宣伝をするよ。もうすぐ文庫が出るからねみんな。#ミツバチの日#みつばちの日 pic.twitter.com/EBf4ffrkRS
— 寺地はるな🥄『カレーの時間』 (@tomotera0109) March 8, 2019
寺地さんはTwitterをやっていらっしゃいます。
今日のハチミツ、あしたの私|感想
生きるのに不器用なところのある主人公が、中学生のころに味わったつらい日々。
そこから抜け出すきっかけをくれたあの人とハチミツ。
それがこの物語のはじまりでした。
30歳になった主人公は、立派な社会人としてチェーンのカフェでイヤな思いをしながらも懸命に働く大人の女性になっていました。
そして、どうも煮え切らない、なんだか頼りない彼氏と暮らしています。
この彼、30歳にもなってバイトを1日で辞めてきてしまうタイプの人で……。
早く別れて次にいけばいいのになんて思ってしまうところもあったのですが、そういう小説ではないです(笑)。
主人公は彼氏を見捨てることなく、彼との未来を選びとることで未来は大きく変わっていきました。
このあたりから彼の実家での仕打ちが衝撃的で、よく彼やその家族と付き合っていられるなと思ってしまいました!
30歳になる女性が今まで続けてきた仕事をやめ、住むところを引き払いついていく、という重さがまったく彼には理解できていなくてびっくり。
子供のことからの親子の関係と、彼自身の資質と、いろいろあってこんなことになっているのでしょうが、だったら実家を頼るなと思ってしまうし、頼るなら説得できるまで彼女に仕事を続けさせろ〜!とやけにこのあたりは引っかかってしまいました。
ただ、ここがこの物語の面白いところであり救いの部分でもあるのですが、このひどい仕打ちによって、彼女が夢中になれて子供の頃から自分のことを助けてくれていたハチミツとつながっていくのですよね。
どの場所にいても、目の前の人と向き合おうと奮闘する人、目の前の人をよく見ている人は魅力的だなと思いました。主人公は出来ることをひとつずつ、そのときやるべきことをひつとずつこなしていく。
葛藤や後悔や怒りや哀しみもあるけでど、それでもそれだけにとらわれずに進んでいくうちに、新たな出会いや喜び、楽しさ、自分自身の人生を見つけていく。
彼との関係性も最終的にすっきりしましたし、私的にはハッピーエンドでした!
途中の蜜蜂の描写など、普段とにかくイヤがってしまいがちな蜂がちょっと可愛く見えてきました。
今度見かけたら危険のない範囲で観察してしまいそうです(笑)。