斎藤幸平さんの「ゼロからの『資本論』」の感想をブログに残しておこうと思います。
2020年に出版された『人新世の「資本論」』が大ベストセラーになりましたが、本作はそれよりもやさしく書かれたマルクスの入門書といった感じ。
薄めでさくっと読めるので、斎藤さんがあのベストセラーで何を語っているのかが気になるけれど、ちょっとページ数多いしなぁなんて方は、本作から入るのもいいんじゃないかと思います。
『人新世の「資本論」』が新書大賞を受賞したのが2021年。
それからわずか2年で、より実感をもってこの本の指摘する資本主義の限界を感じる人が多くなっているのではないかと思います。
私も社会で起こることに対して、明らかにおかしいと感じることが昔よりも増えたような気がしていて、それは行き過ぎた資本主義に起因するものも多いような気がしています。
たとえば……
社会を成り立たせる重要な存在であるエッセンシャルワーカーの賃金が過剰に低く、広告・コンサル業などの賃金が過剰に高いとか。
資産を生み出す目的でない仕事に対しても、資産をどれだけ生み出すかで価値をはかるとか。
あらゆるものに資産価値があるかを見て、公共的なものですら、資産を生み出すか・生み出さないか、コスパがいいか・悪いかなどで見ていく。
資本主義が進めば進むほど、公共のものであったものが商品にされてしまう。
本作で提案するコミュニズムとソ連や中国のものとの違いも語っていて、ソ連や中国のものというのは、国に搾取されやがて搾取する側の官僚などに富と権力が集中していく、形をかえた資本主義に過ぎないという指摘がありました。
確かに、結局資本の増大を目指しているのだから、価値観は資本主義と同じなので資本主義を乗り越えたりはしないですよね。
脱商品化してコモンを増やしていくこと、無限の経済成長を目指す無計画な労働から、ニーズに合わせた使用価値重視の社会への転換していくこと。
もう本当に、そろそろ転換してもおかしくないところまで来ているような気はするけれど、一体それはいつどのように起こるのか。
その点で一歩先をいく、バルセロナやアムステルダムのミュニシパリズム(地域自治主義)がどのように発展し波及していくかも気になるところです。