最近、再読の楽しさにハマっていて、今回の作品も昔読んだ作品です。
大学生や社会人のはじめの頃に読んだ物語って、すでに結構内容を忘れているものの印象だけは残っていて、いい印象の本はハズレがない(笑)
過去の自分が読んで満足したものだから、まぁそうですよね。
ただ、作品に対しての見方は変化していると思います。
『天国はまだ遠く」は、仕事がうまくいかず人生に疲弊してしまった主人公が自殺に失敗するところから始まります。
自殺というシリアスなエピソードが、追い詰められてはいるもののテキトーな性格の主人公によっていい加減に為されて失敗です(笑)
この前半のクライマックスを過ぎると、主人公のあっけらかんとした脱力感に読む方も肩の力が抜けていきました。
ちょっと変わった民宿で過ごす日々のなかで、今までの暮らしとは全く違う世界を知り、徐々に子どものような無邪気なたくましさを取り戻していく主人公。
瀬尾さんの描く主人公って、人間としての可笑しみがにじみ出てて好きです。
少女漫画感のあるヒロインではなくて、現実感があってちょっと抜けてて、本当にそこらへんにいそうな感じ。
最後に、主人公が下手な絵を描き上げるシーンがとてもよかった。
上手いから描くわけじゃない。
求められているから描くわけじゃない。
完璧を目指して、完璧がほしくて描くわけじゃない。
ただ描きたかったから。
気持ちがいいから。
かつての自分がどこかで置いてきてしまった感覚を、主人公がもう一度手に入れたように感じました。