この記事では、フリーランスの校正者である私が、
どんな校正作業を行っているのかをご紹介します。
「文章を読んで間違っている箇所を直す」というところまでは、
校正の仕事の内容として知られている部分だと思います。
では、その間違った字や内容はどうやってみつけてきたものなのか。
私が行っている種類の作業だけになりますが、
ご紹介していきたいと思います!
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目次
校正作業の種類
校正作業によって必要となるものが変わりますが、
ゲラは必ず必要になります。
疑問や修正することが出てきた場合は、エンピツや赤ペンでゲラに書き込みます。
ゲラは「カンプ」とも呼びます。
原稿引き合わせ
元となる原稿(元原稿)とゲラを1字づつ確認し、
過不足なく正しい文章・正しい文字・正しい画像などが入っているかを確認します。
データを流し込んでいるだけというゲラの場合は、
あとで説明する「あおり校正」で済ませる場合もあります。
また、「突き合わせ」などと呼ぶこともあります。
赤字校正
赤字の入った箇所とゲラの同じ箇所を確認し、
正しく直っているか確認します。
初校ゲラの訂正部分は再校で確認、
再校ゲラの訂正部分は三校で確認します。
*ゲラは初校→再校→三校…と工程を経ていきます。
すでになんらかの工程を経て、
最後にまとめてすべての赤字を確認するという場合は、
新しい赤字原稿から確認します。
上の例で言うと、三校→再校→初校の順になります。
これは最新の情報が正しいものだからです。
初校でも再校でも三校でも同じ箇所に赤字が入るということは珍しくありません。
この場合、初校や再校の赤字は古い情報となり、
最終的に最後の赤字となった三校の赤字がクライアントの回答ということになります。
ちなみに、いろいろな理由から
誤って古い情報に戻ってしまったことを「先祖返り」と言ったりします。
また、赤字校正は「赤字つぶし」などと呼ぶこともあります。
赤字原稿を確認したゲラの該当箇所を
ダーマトやマーカーなどで塗りつぶし、赤字を一つずつつぶしていきます。
新しい赤字原稿から古い赤字原稿へ遡って赤字を確認していく際、
すでに塗りつぶした箇所に、再び赤字の指摘があっても無視します。
そうすることで古い情報は反映されず「先祖返り」を防げます。
また、この作業のときに、
赤字原稿にある赤字の確認漏れを防ぐため、
赤字原稿の方の赤字もダーマトやマーカーなどでチェックしていくことがあります。
これは「消し込み」と言ったりします。
上で、初校、再校、三校と書きましたが、
単純に「赤字+日付」のように書かれている場合もあります。
この場合も日付で新旧を確認し、同様に作業していきます。
あおり校正
同じページの、原稿を上、ゲラを下にし、
なるべくぴったりと重なるような状態にして(トンボがあればトンボを合わせる)、
上の原稿を扇ぐように動かし、
残像で文字や文章や画像などが同じになっているかを確認します。
これは、
赤字の指摘があった部分以外が誤って変更される「指定外変更」を防ぐために、
前と同じであるかを確認するための作業です。
扇ぐ仕草から「パタパタ」と呼ぶこともあります。
基本は指定外変更の確認なのですが、
重ねてくらべることで、
並べてくらべるだけでは気がつきにくいことに
簡単に気づくことがあります。
そのため、原稿引き合わせのあとにざっとあおってみたり、
前号と体裁が変わっていないかざっとあおってみるなど、
いろいろな場面で使います。
私が受講していたとき、エディタースクールの通信教育講座では、あおり校正を習いませんでした。でも、現場に出るとかなりの頻度で使うことになります!
素読み校正
ゲラを読み、
誤字脱字、内容の整合性、体裁、画像、言葉遣い、差別用語がないか、一般的な事柄におかしいところがないかなどを確認します。
読んで得られる情報のすべてに変な部分がないかチェックしていくイメージです。
表記の揺れなども、クライアントの希望する方向で指摘していきます。
希望する方向というのは、
独自の表記表や記者ハンドブックなどにそろえる、
特集ごとにそろえる、
冊子全体で多出にそろえる、
揺れている文言をすべて指摘する(統一の判断はしない)、
揺れを指摘しないなど
さまざまななパターンがあります。
また、執筆要綱にある項目を確認しながら素読みを行うこともあります。
私の場合、素読み校正をお願いされたときは、
人名や会社名、歴史的な出来事、簡単に調べられる情報などは、
ネットで初出時に調べながら作業を行うことが多いです。
簡単に調べられないことについては、
それ以上は調べず、ゲラの中で文言や情報が揺れていないかを重視して確認します。
根拠は見つけられないけれど、なんか変だと感じる箇所は
エンピツでアラートを出しておくことが多いです。
ファクトチェック
指定された事柄について、
ネットや渡された資料をもとに事実確認を行います。
私の場合は、
何を根拠にするかは打ち合わせのうえで行っていて、
自主的に図書館で資料を探してくるとか、
そういったことをしたことはありません。
固有名詞や、一般的な事柄だけネットや辞書で調べるとか、
指定された資料やサイトを元に確認するとか、
何らかの指示があって行っています。
専門的な部分の正しさを確認するというよりは、
一般の読者が気づく可能性のある部分を、
もれなく確認することに注力しています。
校正作業の指示の例
実際の現場では、
「この部分は突き合わせして、赤字つぶしとパタパタもお願いします。」
とか、
「赤字校正と素読み校正をお願いします。」
とか、
「あおりながら素読みしてください。」
とか、
「とにかくパタパタだけお願いします。」
とか、
「素読みと指定した事柄のファクトチェックをお願いします。」
とか、
「ここは引き合わせして全体を素読みしてください。」
など、さまざまな組み合わせで依頼をされることが多いです。
各作業の意味を考えて、
何からやっていくと正しいものが出来上がるのか
考えながら作業することが大切です。
まとめ
校正作業はただ文字を読むだけでなく、
何が正しいのかを見極め、適切な作業を繰り返し、もれなく作業することが大切だと思います。
はじめのころは、一度に指示をされると混乱してしまうこともあると思いますが、
そんなときは、メモをとり、あとで作業手順を自分で整理してから手をつけましょう。
また、渡された資料ははじめに全体を確認しておきましょう。
資料がたくさんあるときなど、
あとになって確認すべき資料がでてきたり、
時期の不明な赤字原稿がでてきてしまったりすることがあります。
この記事では、私が普段行なっている作業だけを書きましたが、
校正者がいったいどんな作業をしているのか、
少しイメージできたでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。