こんにちは、楓*です♪
この記事では、小野不由美さんの『魔性の子』についてご紹介しています。
『魔性の子』は十二国記シリーズのなかの1冊で、この物語自体がシリーズ全体のプロローグとなっています。 エピソード0に位置づけられ、この物語を読まなくても十二国記シリーズを読み進めることはできます。
ただ、最新作の『白銀の墟 玄の月』にも影響し、十二国記を異なる視点で見ることにより、その世界をさらに深く理解できるように思います。
以下にあてはまる人には特にオススメの作品です♪
- これから十二国記を読みたいと思っている人
- 十二国記を読み始めたけどこの物語は飛ばした人
- 『白銀の墟 玄の月』を読む前の人
- ファンタジー系のホラーが好きな人
- 複雑なファンタジーが好きな人
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目次
『魔性の子』作品の情報
公式サイトの情報をまとめています。
特設サイトや公式Twitterなど面白い企画もたくさんあるシリーズです。
公式サイトの情報
読み仮名 | マショウノコジュウニコクキ |
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シリーズ名 | 新潮文庫 |
発行形態 | 文庫 |
定価 | 781円 |
発売 | 1991年9月25日 |
公式サイト |
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Wikipedia |
公式サイトでの作品紹介はこんな感じでした。
どこにも、僕のいる場所はない──教育実習のため母校に戻った広瀬は、高里という生徒が気に掛かる。周囲に馴染まぬ姿が過ぎし日の自分に重なった。彼を虐(いじ)めた者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟(たた)る」と恐れられていたが、彼を取り巻く謎は、“神隠し”を体験したことに関わっているのか。広瀬が庇おうとするなか、更なる惨劇が……。心に潜む暗部が繙(ひもと)かれる、「十二国記」戦慄の序章。
「この物語は、これから始まる全てのプロローグです」小野不由美
自分の居場所はここではない――。
クラスで孤立する高里少年の周りで次々と起こる事故。そして、更なる惨劇の果てに明らかにされるものとは……。戦慄のシリーズ序章!
引用:シリーズ作品紹介|小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト
著者の小野不由美さんについて
小野不由美 オノ・フユミ
大分県中津生れ。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に在籍。「東亰異聞」が1993(平成5)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、話題を呼ぶ。2013年、『残穢』で山本周五郎賞受賞。著書に『魔性の子』『月の影 影の海』などの〈十二国記〉シリーズ、〈ゴーストハント〉シリーズ、『屍鬼』『黒祠の島』『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』などがある。
小野不由美さんの作品は全て読んでいますが、もれなく面白い稀有な作家さんだと思っています。
ハマる人にはばっちりハマる濃厚なホラー、複雑なファンタジー加減がたまりません。
京都在住で旦那さんはミステリー作家の綾辻行人さんというのも有名な話ですね。
十二国記『白銀の墟 玄の月』を4巻まで通読。『魔性の子』からの長い道のりを、こういう形でよくぞ書ききったなあ――と、今さらながら非常に感慨深く。
— 綾辻行人 (@ayatsujiyukito) November 4, 2019
たくさんの読者が待っていてくれて良かったね、主上。←このように僕が「主上」と呼ぶのは基本、大変に嫌がられます(笑)。
『魔性の子』のあらすじやポイント
ここから『魔性の子』のポイントとなる人や事柄についてピックアップし、もう少し詳しいあらすじを紹介しています。
広瀬が出会った奇妙な少年
母校に教生として戻ってきた広瀬は、元担任の化学教師・後藤のもとで教育実習を行うことになった。
後藤の担当するクラスは二年六組。
そのクラスで存在感の欠けた不思議な生徒に出会う。
随分とまわりと雰囲気の異なる存在、奇妙なまわりの反応。
「変わってるというより、高里は異質なんだ」
「とにかく、あいつは変なんだよ」
それはまるで、高里から目を逸らそうとしているようでもあった。
どこかおかしい…周囲の異様な反応
そんな中、学校では体育祭に向けて準備が進み、教室には一年から三年までの生徒たちが出入りしている。
そこへ化学準備室にいりびたる三年の生徒・橋上がきて、高里がかつて神隠しに遭ったという話が本当なのか質問する。
すると教室は濃い緊張感に包まれるが、一瞬で目を逸らすかのようにそれぞれがそ知らぬ顔をして作業を始める。
さらに質問を続ける橋上に、高里がそんなことを言う人がいるのかと問うと、橋上は築城という生徒を顎で示す。
すると血相を変えて否定し、逃げ出すように教室から出ていく。
その放課後、2人の生徒が怪我をする。
その生徒とは築城と橋上だった。
「高里の祟り」
あの日逃げ出すようにして帰った築城は広瀬に言う。
「高里を怒らせると死ぬんだ」
一部の生徒に「高里の祟り」という信仰があることを知る広瀬。
そのことを後藤に話すと、確かに彼のまわりでは死人や怪我人が多いのだという。
ただしそれが、単なる偶然なのかそうでないのかはわからない。
はじまる惨劇…
高里に対する周りの反応を諌めようと、化学準備室の常連で隣のクラスの岩木が高里に絡み、高里が祟らないことを証明しようと高里の頬を張る。
「これで俺は死ぬはずだな」
岩木は周りの生徒を皮肉をこめて見渡す。
しかしその翌日、体育で騎馬戦を練習している二年五・六組の授業中にある異変が起こっているのを見た広瀬は急いでグラウンドに向かうと、そこは恐慌状態に陥り、顔の判別がつかないくらいの怪我を負った生徒が倒れている。
名札は「岩木」。
しかしこれはさらなる惨劇の始まりにすぎず、事態はエスカレートしていく。
高里のまわりにいる得体の知れないものたち
放課後教室で一人佇む高里を見かけ話しかける広瀬。
その広瀬の足許を走り抜けた何か。
神隠しのときに高里を呼んだ白い手。
橋上と築城を押さえつけた白い手。
広瀬が見た、後ろから抱きしめるようにかけられた白い手。
高里のまわりには何かがいるようだ。
やがて広瀬のまわりにも何かが近づいてくる。
ーーオマエハ、オウノ、テキカ。
広瀬が問われたこの意味とは。
似ているようで似ていない広瀬と高里
子供の頃の臨死体験以降、ここではないどこかこそ自分の帰るべきものなのだと感じるようになった広瀬。故国喪失者の感傷を抱いている。
高里と話した広瀬は、高里が神隠しのあったあの一年にいた場所の記憶を取り戻し、その場所へ戻りたいと思っていることを知る。
自分の家族のもとにすら居場所のない高里を匿うことになった広瀬は、そんな高里に強い共感をいだき始める。
広瀬を心配する後藤は、高里と広瀬は似ているようで異なるというが、その一方で広瀬にしか高里を理解できないのではないかという思いもある。
似ているように見える二人の決定的に違う点とは何か。
“き”を探すものたち
広瀬や高里にいる町で目撃されるようにな “き”を探すものたち。
夜の町や浜辺にあらわれ、話しかけられると“き”を知らないかと問い、ふいに消えてしまう。
“き”とは何なのか。
探しているものたちは何者なのか。
『魔性の子』を読みやすく
『魔性の子』をより読みやすく、より楽しめるように、時代設定と関連作品、 登場キャラクターなどをまとめています。
時代設定と関連作品
- 現代
- Episode9『白銀の墟 玄の月』で描かれる事件と重なる時期にあたる
- Episode8『黄昏の岸 暁の天』で描かれる事件と重なる時期にあたる
- Episode2『風の海 迷宮の岸』ともつながっている
-
Episode7『華胥の幽夢』「冬栄」ともつながっている
舞台
蓬莱(日本)
登場キャラクター
広瀬
教育実習生として母校に戻り、高里という生徒を知る。異質な空気をまとう彼の姿を、かつての自分に重ねている。周りで囁かれる不穏な噂から彼を守ろうと奮闘するが――。
高里要(たかさと・かなめ)
周囲に馴染めず、違和感を抱き続ける高校生。彼を虐めた者が不慮の事故に遭うため、「祟る」と恐れられている。“神隠し”の体験を持つ、謎に包まれた少年。
引用:シリーズ作品紹介|小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト
後藤 化学教師。高里の現担任で、広瀬の高校時代の担任でもある。
築城 二年六組の生徒。高里のクラスメイト。化学準備室に出入りする生徒の一人。
岩木 二年五組の生徒。化学準備室に出入りする生徒の一人。
橋上 三年の生徒。化学準備室に出入りする生徒の一人。
坂田 二年の生徒。化学準備室に出入りする生徒の一人。
野末 一年の生徒。化学準備室に出入りする生徒の一人。
『魔性の子』感想
『魔性の子』の感想をネタバレありで自由に綴ります。
十二国記シリーズはじまりのエピソード
舞台の中心となる世界は異なりますが、個人的にはこのエピソードなくして十二国記ははじまらない!と思っています。
この物語によって、ただのファンタジーではなく現代の日本の裏側で別の世界が展開されていることを実感でき、十二国記の世界にすんなりと入っていけるような気がするのです。
十二国記というその世界は、明らかにこの世界とは異なる秩序のもとで廻っている世界なんだなと。
単体で読んでも面白い完結した物語でもある
たくさんの謎めいた登場人物や何者かは、『魔性の子』のなかで全ては明らかになりません。
その謎めいた者たちについても、シリーズを読み進めていくことで詳らかになっていくのですが、この謎めいた者たちが謎のままだったとしても、ホラーとしての面白さが残るのが『魔性の子』という作品のすごいところ。
人間の理解を越えた存在という恐ろしさは、幽霊とかそういった類の怖さに繋がりますね。
人間の暗部を描く人物像の深さ
世界観の設定や、物語の展開だけをみても相当面白いお話なわけですが、広瀬の持つエゴ、後藤の持つエゴ、忖度しはじめた生徒たちのエゴなど人間の持つ暗部をまざまざと見せつけられ、逆に人ならざるものゆえの高里のエゴのなさも際立ち、物語をさらに深みのあるものとしているように感じました。
築城の弱さ、岩木の正義感、坂田の醜さ…橋上や野末など、脇役たちのキャラクターも人という存在が持つ様々な一面を見せてくれるような気がします。
高里要と広瀬の出会い
最後に広瀬のエゴを見せつけられたところで、結局この二人の出会いとは何だったんだろうと思っていたのですが、それがなんと『白銀の墟 玄の月』で回収されるとは思ってもいませんでした!(深くは言及しませんが、読んだ人にはわかると思います)
『魔性の子』は基本的に広瀬の物語のため、高里の心の動きが図りづらいです。そのため高里にとって広瀬というのは必要な存在だったのかと思ってしまったのですが、それは穿った見方でした。
いや、シリーズを読み進めていくと、泰麒という人の人柄がわかるので感謝しかしてないだろうとは思ったのですが……。本人が言ってたわけじゃないし……笑
でも『白銀の墟 玄の月』で実感しました。やはりあの状況で高里を安全に保護し、寄り添い、失われた記憶を導き出してくれた広瀬は、高里にとってはこの世界で唯一自分の心を救ってくれた存在なんですよね。
『魔性の子』は本当に大好きな物語で、何度も何度も読み返していたのですが、高里にとっての広瀬の存在が私の中でやっと腑に落ちた感じがしました。
その点は、ホラーとして楽しんでいる時点では気にならなかったのですが、一続きのシリーズとして読み進め、泰麒としての高里を主人公にした物語を読んでいくと、だんだん客観的にみてこの出会いってなんなんだと思ってしまったのですよね。
きっと泰麒に戻ったあとの高里は、麒麟としてこの後長〜く生きていくとしても、広瀬という人のことを忘れることはないのだと思います。
びっくりするくらいに飽きない大好きな物語
ここまで書いていて思ったのですが、私は本当に『魔性の子』という物語が大好きです。
本当は周りの人、一人ひとりに読むことを勧めたいくらいなのですが、なにぶんホラーみがすごいので行動に移してはいませんが……笑
それにしても、人間の世界で次々起こる不可解な出来事の裏側にこんなにも壮大な世界が展開されているなんて、なんて贅沢なプロローグなんでしょうね。シリーズのプロローグだけで面白いなんてことがあるんだなぁ……!
しかも18年後に出された最新作『白銀の墟 玄の月』との繋がりもあり、どちらもそれぞれの物語に深みを与えているような気がして、18年後に再び『魔性の子』を新鮮な視点で読むことができて本当に幸せだなと思いました!
私はこれからも、『魔性の子』をはじめ十二国記シリーズを再読し続けると思います。
また、短編の出版も予定されているので、楽しみに待ちたいと思います♪
最後までお読みいただきありがとうございました!