中島たい子さんの『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』を読みました。
とはいえ、フランス人をファンタジーのような存在としてやたら褒めるようなことはなくて、親戚であり長い付き合いがあるからこその冷静な指摘が面白い作品です。
そんな『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』の作品情報と感想をまとめておこうと思います。
パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら|作品情報
2018年にポプラ社から出版された作品で、巻末に取り上げられた料理のレシピが付いています。
毛玉のついたセーターでも、なぜかおしゃれ。掃除は週1なのに、なぜか雰囲気のいいお部屋。手間をかけないのに、驚くほどおいしいお料理。30代……そして40代、これからの人生ちょっと不安だったけど、フランスでお手本にしたい憧れの女性を見つけた!ほどほどが、軽やかでいい――パリ郊外で叔母ロズリーヌが教えてくれた、フランス流・毎日を楽しむ「風通しのいい」暮らし方。
目次
ロズリーヌの四角いバゲット 1
ロズリーヌの四角いバゲット 2
マロンアイスクリームはビンに入れて
これがロズリーヌのフルコース!
空の下で、バゲットに板チョコをはさむ
シスターのキッシュ
ある美しい結婚
ロズリーヌからの贈りもの
掃除をしすぎると、怒ります
家具もレースも男性も、古い方がお徳?
ソフィーのクローゼットをのぞいたら
ルールはない、と言うソフィーにあるもの
旅には、かわいい柄の寝袋を
森のイチゴで、ジャムを煮るレシピ
パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら – ポプラ社
ロズリーヌの四角いバゲット/マロンのアイスクリーム/ルバーブのクラフティ/ソフィーのドレッシング/ソフィーのトマトソース/シスターのキッシュ/ロズリーヌのクスクス
パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら|感想
フランス人の暮らし方をテーマにした本ってたくさんあると思うのですが、褒めすぎていたり、決めつけすぎているように感じる作品も多いような気がします。
この作品はそういった作者の思い込みみたいなものがあまり感じられず、フランス人を見習いなさいというよりは、ロズリーヌ叔母さんがかっこいいことを今更だけど認めることにした、というのを起点として良さを伝えてくれる点が私に合っていました。
確かに国民性というのはあるけれど、みんながみんがそうではないし、親戚として長く濃い付き合いがあるからこその指摘には、人間らしい矛盾までもが書かれていて、それがリアルなものとしてロズリーヌたちの存在を感じさせてくれました。
フランス人はこう、だからコレに対してもこう、それを見習うべき。
みたいな、自己啓発(日本人が勝手に啓発されているだけですが・笑)っぽい感じはおなかいっぱいなので、ありのままの暮らしぶりのほうが興味がわきます。
肩の力を抜いたありのままの良さを、こちらも完璧に真似します!みたいな意気込みを一切持たずに受け取ることで、かえってこのレシピを試してみたいなとか、読んでいるときに自分自身の暮らしに気楽に取り入れてみようという意欲がわきました。
レシピについては、登場するエピソードを読んでいるだけでも美味しそうで、作ってみたいものばかりでした。
「がんばらないけど押さえるポイントは押さえて美味しく」というのは、料理だけでなく暮らしのなかの様々な部分で、そのバランス感覚の良さが発揮されており、自分の感性を疑わず、自分のさじ加減で選択することの積み重ねが、その人の揺るぎない個性を作っていくのかなと思いました。
特に人に説明できなくても自分の感性を疑わないという感じが、登場するフランス人女性の様子から窺えたのですが、その感じ、頭でっかちになりがちな私にはいいヒントになりました!