スチュアート・タートンの『イヴリン嬢は七回殺される』を読みました。
この作品、帯のコピーが超魅力的なのですよ。
館ミステリ+タイムループ+人格転移
驚異の超絶SF本格ミステリ、登場!
などとありまして、ミステリ好きやSF好きがついに気なってしまうような設定がかけあわされているのです……!
読む前からその発想はなかった!と、かなりインパクトがありました。
2段組み、400ページ超とかなり長い作品ですが、挑戦してみることにしました。
イヴリン嬢は七回殺される|作品情報
2018年に本国で出版後、2019年に日本で文藝春秋から出版。
この複雑怪奇なSFミステリは、30代後半にして本作デビューの英国出身のフリーのジャーナリスト、スチュワート・タートンにより描かれました。
フィナンシャル・タイムズ選ベスト・ミステリ!
コスタ賞最優秀新人賞受賞!仮面舞踏会の夜、令嬢イヴリンは死んだ。
おまえが真犯人を見つけるまで、彼女は何度も殺される。館ミステリ+タイムループ+人格転移。 驚異の超絶SF本格ミステリ、登場。
森の中に建つ屋敷〈ブラックヒース館〉。そこにはハードカースル家に招かれた多くの客が滞在し、夜に行われる仮面舞踏会まで社交に興じていた。
そんな館に、わたしはすべての記憶を失ってたどりついた。自分が誰なのか、なぜここにいるのかもわからなかった。だが、ひょんなことから意識を失ったわたしは、めざめると時間が同じ日の朝に巻き戻っており、自分の意識が別の人間に宿っていることに気づいた。とまどうわたしに、禍々しい仮面をかぶった人物がささやく――今夜、令嬢イヴリンが殺される。その謎を解き、事件を解決しないかぎり、おまえはこの日を延々とくりかえすことになる。タイムループから逃れるには真犯人を見つけるしかないと……。
悪評ふんぷんの銀行家、麻薬密売人、一族と縁の深い医師、卑劣な女たらしとその母親、怪しい動きをするメイド、そして十六年前に起きた殺人事件……不穏な空気の漂う屋敷を泳ぎまわり、客や使用人の人格を転々としながら、わたしはの謎を追う。だが、人格転移をくりかえしながら真犯人を追う人物が、わたしのほかにもいるという――英国調の正統派ミステリの舞台に、タイムループと人格転移というSF要素を組み込んで、強烈な謎とサスペンスで読者を離さぬ超絶SFミステリ。
イヴリン嬢は七回殺される – 本の話
イギリスの本読みたちを唸らせて、フィナンシャルタイムズ選ベスト・ミステリ、コスタ賞最優秀新人賞受賞。
多数のミステリ賞、文学賞の最終候補となった衝撃のデビュー作!
イヴリン嬢は七回殺される|感想
いやー長かった!(笑)
第一部、第二部などと分かれておらず、ストーリーが全部つながっていることもありなかなかの読み応えでした。
内容の方は、予想のつかないSF的展開がひたすら続き話についていくのがやっとの前半から、SF的展開に慣れミステリとしてこれから起こる殺人事件と過去の殺人事件の謎を解き明かそうとする中盤、そして、明後日の方向から湧いてきたこの世界の秘密と真相……!
この明後日の方向からきた答えというのが、突拍子もないのに、決して無茶苦茶だったり興ざめしてしまうような感じにならないのがすごいところ。
「そっか……!よくわからないけどだからか……」みたいな、その時点では全容はわからないとしても何やら説得力がある。
これがこの作品のすごさだと思いました。
SF的設定とミステリがちゃんと共存してそれぞれの設定をぼやかすことなく成立しているのです。
そのあたりの設定がぼんやりしてしまうとちょっと冷めてしまいそうなのですが、驚きの練られ具合でした!
あっぱれ!って感じ(笑)。
独創性があって、閃きもあって、根気もあって、作家ってやっぱりすごいや〜!
しかし、ちょっとだけ残念なのが、翻訳文がちょっと難解なところ(笑)。
ネットでもそのようなレビューをチラホラ見かけました。
でも私はそこまで不満を持ってはいません!
だって、こんな作品、伏線をこぼさずに他の言語にするだけでとんでもない作業量だよ……!
校正・校閲だって、こんなの細かい言い回しより、誤字脱字を取りこぼさず無数にあるはずしてはならない文言を見ているので精一杯のはず。
そして、だからといって予算がいつもの倍、なんてことはないはず!
どうやら第二作も本国では2020年に出版されたとか。
次回作も楽しいみです♪