十二国記シリーズの短編集『華胥の幽夢』より「冬栄」の感想を書きました。
『華胥の幽夢』は全5編からなる短編集です。
このうち「冬栄」は泰麒を主人公とし、
『風の海 迷宮の岸』のあと、数カ月後くらいのお話です。
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2019年秋に発売され新刊『白銀の墟 玄の月』にも登場する人物たちの、
キャラクターやかつてのやりとりが気になって再読してみることにしました。
『華胥の幽夢』より「冬栄」のあらすじ
公式サイトでの紹介の確認から♪
・冬栄
戴国は雪深い国。王・驍宗が、幼い麒麟・泰麒を旅立たせ、見せた世界とは──。初めて登場する漣の国の様子にもご注目ください。
[主に舞台となる国]戴、漣
驍宗が登極し、国を整えるため忙しく過ごすなかで、
幼くまだ何もできない自分に罪悪感を抱く泰麒。
そんな折、驍宗からかつてお世話になった廉麟、
ひいては漣国にお礼を伝えに行ってほしいと頼まれる。
迷いながらもその命を受け、
十二国の果てから果てへ、泰麒は向かう。
そこで見たもの、そこで知った麒麟の役割とは。
『華胥の幽夢』より「冬栄」の感想&レビュー
ここからネタバレを気にせず綴っているのでご注意ください!
新刊の『白銀の墟 玄の月』を楽しむために再読をしたお話でしたが、
やはりしばらく読んでいない人は新刊の前にさらっと再読してみてほしい作品だと思いました。
新刊でキーパーソンとなる人たちや、
泰麒とかつて関わりのあった人たちの間にある温かなやりとりは、
今後の展開を考えると思うところはあるものの、
とても印象的で、インパクトがあります。
このエピソード自体もいいお話なのですが、
この前後の出来事と裏で起きているストーリーとの落差がすごいですよね!
その落差を思うと、
すごく癒やされる泰麒と正頼のやりとりもちょっと切なく感じたりして。
「正頼ったら、酷いんです。前にも僕が令尹って何と訊いたら、それは子守のことだって言うんですよ。驍宗様にそう言ったら、笑われてしまいました」
小野不由美「冬栄」『華胥の幽夢』新潮社、2014、p.14
令尹って宰相のことです。
本来はれいいんだと思われますが、ルビもさいしょうとなっています。
十二国記流に翻訳されているルビですね。
まだ幼い泰麒には養育を司る傅相がつけられ、
それが正頼で、州の令尹を兼ねているという設定です。
この二人のやりとりは微笑ましいものが多くてもっと読みたいくらいでした。
また、新刊で謎&謎、とにかく謎な彼の人とのやりとりもあるので、
やっぱり一度確認したほうが面白いのではと…!
「冬栄」のみに焦点を当てると、
蓬莱での過去もあって自分の出来ることの少なさを責めてしまう小さな麒麟が、
戴とは全然違う国を見て、
その出会いのなかで麒麟としての自分の役割を知り、
不安定だった泰麒が自分の居場所を見つけることができる、
読んでいる私達がほっと胸をなでおろすような温かいお話でした。
温かいお話とその裏や前後でうごめく王朝の出来事。
短編なのに実は重い!そんなエピソードでした♪
最後までお読みいただきありがとうございました!