こんにちは、楓*です♪
この記事では、小野不由美さんの十二国記『月の影 影の海』(上)についてご紹介しています。
『月の影 影の海』は十二国記のシリーズの中でエピソード1に位置づけられ、「十二国記」シリーズの本編が動きだす重要な物語です。
『月の影 影の海』でのストーリーが元となって他のエピソードに続くため、十二国記に興味を持った人はエピソード0の『魔性の子』か、エピソード1の『月の影 影の海』から読み始めるといいと思います。
[box06 title=”あわせて読みたい”]『魔性の子』小野不由美|祟るとされる少年の本当の姿に驚かされる「十二国記」戦慄の序章[/box06]
『月の影 影の海』は以下にあてはまる人には特にオススメの作品です♪
- これから十二国記を読みたいと思っている人
- ファンタジー系のホラーが好きな人
- 複雑なファンタジーが好きな人
- 人が凄まじい逆境を乗り越えていく姿に勇気づけられたい人
↓目次から見たい箇所へ飛べます↓
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目次
『月の影 影の海』(上)作品の情報
公式サイトの情報をまとめています。
特設サイトや公式Twitterなど面白い企画もたくさんあるシリーズです。
公式サイトの情報
読み仮名 | ツキノカゲカゲノウミ1ジュウニコクキ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮文庫 |
発行形態 | 文庫 |
定価 | 572円 |
公式サイト | 小野不由美『月の影 影の海〔上〕 十二国記』|新潮社 |
@12koku_shincho | |
Wikipedia | 十二国記「月の影 影の海」 |
公式サイトでの作品紹介はこんな感じでした。
「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。
「お捜し申し上げました」――。
謎の男に、突然異界へと連れ去られた高校生の陽子。見知らぬ国で、ことごとく裏切られてもなお迸ほとばしる生への執着を描く。なぜ少女は異界へ迎えられたのか――本編第一作、衝撃の開幕!
引用:シリーズ作品紹介|小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト
著者の小野不由美さんについて
小野不由美 オノ・フユミ
大分県中津生れ。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に在籍。「東亰異聞」が1993(平成5)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、話題を呼ぶ。2013年、『残穢』で山本周五郎賞受賞。著書に『魔性の子』『月の影 影の海』などの〈十二国記〉シリーズ、〈ゴーストハント〉シリーズ、『屍鬼』『黒祠の島』『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』などがある。
小野不由美さんの作品は全て読んでいますが、もれなく面白い稀有な作家さんだと思っています。
ハマる人にはばっちりハマる濃厚なホラー、複雑なファンタジー加減がたまりません。
京都在住で旦那さんはミステリー作家の綾辻行人さんというのも有名な話ですね。
秋は十二国記祭りになりますね。嬉しいことですにゃ😺 https://t.co/JPpkgkau1h
— 綾辻行人 (@ayatsujiyukito) April 19, 2019
『月の影 影の海』(上)のあらすじやポイント
ここから『月の影 影の海』(上)のポイントとなる人や事柄についてピックアップし、もう少し詳しいあらすじを紹介しています。
陽子にあらわれた変化と金髪の男
おとなしく優等生な女子高生の陽子。
両親、先生、友達……周りの人に合わせてしまいがちなところはあるが、平凡な毎日を送っていた。
しかし、一ヶ月ほど前から奇妙な夢を見るようになった。闇の中の紅蓮の明かり、そのなかに異形の獣が見え、夢の中で日に日に陽子に近づいてきていた。
目を覚ませば、日常生活をいつもどおり過ごす陽子だったが、ある日学校に金髪の長髪の男が迎えにくる。
男は陽子を見て「……見つけた」というが陽子には覚えがない。
敵がくると言って連れて行こうとする彼を拒否する陽子。
やがて学校にまでその敵がやってくる。
仕方なくケイキに従って一緒に逃げる陽子。
敵に追われるその背後の景色は夢で見た紅蓮の明かり……。
連れてこられた異世界
ケイキたちによって異世界につれてこられてしまった陽子。
そこは海の中に星屑が見えるような、理の異なる世界だった。
しかし、あろうことか彼らの姿はない。
途方に暮れた陽子は近くにあった集落の人に話しかけてみると言葉が通じる。
安堵した陽子だが、海の向こうから来たとわかると彼らは海客として陽子を捕らえる。
疑いと裏切り
捕らえられた陽子の乗っていた馬車が妖魔に襲われた。
すると林の向こうに金髪の人物が見え、陽子に憑けられた妖魔のジョウユウがケイキの呼び名を口にする。
その人物はケイキなのか。ケイキが妖魔を差し向けているのか。
やがて、生きていくうえでは仕方がないと押し入った民家で親切な中年女性・達姐(たっき)に出会う陽子。
達姐との出会いで、この世界に来て以来やっと安心したのもつかの間、達姐は陽子を緑色の柱の建物へと連れて行く。
その建物は……。
生への執着と諦め
この世界で出会う人々に裏切られる陽子。
この世界に自分の味方はいない。誰も陽子を助けない。
人を避け、野営を続ける陽子の心を慰めるのは剣が見せる幻影と、蒼い猿。
蒼い猿は、陽子に死んだほうがましだと言って誘惑し、剣の幻影はやがて、かつていた世界でも誰も陽子を待っていない……真に孤独であることを陽子に見せつける。
それでも……。
死にたくないのではない、きっとない。生きたいわけでも多分ない。ただ陽子は諦めたくないのだ。
帰る。そこで何が待っているかはそのときに考える。
なんとか持ち直そうとする陽子だったが、金髪の人物や妖魔の襲撃は続き、雨の中、とうとう倒れ込む。
もう、どうでもいいことだ。じきに全部が終わるのだから。
『月の影 影の海』(上)を読みやすく
『月の影 影の海』(上)をより読みやすく、より楽しめるように、時代設定と関連作品、 登場キャラクター、用語、地名、設定のポイントなどをまとめています。
時代設定と関連作品
- 現代
- Episode4『風の万里 黎明の空』へとつながっていく
舞台
- 蓬莱(日本)
- 巧国
登場キャラクター
中嶋陽子(なかじま・ようこ)
温和しく優等生の少女。その日々は、見知らぬ異界へと辿り着き一変する。長く険しい旅で多くの人に裏切られ、苦しみを体験していくことに……。
ケイキ
金色の髪の男。陽子の通う高校に現れ、彼女を連れ去るが、その後、忽こつ然ぜんと姿を消してしまう。陽子を迎えに来た目的は、彼が担う役割とは、いったい何なのか。
引用:シリーズ作品紹介|小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト
ケイキの下僕
ヒョウキ:暗赤色の毛並みの豹のような獣
カイコ:腕は鳥の翼、羽毛に覆われた脚は人、長い尾を持つ女
ハンキョ: 銅色の毛並みをした大型犬に似た獣
ジュウサク:狒狒に似た獣
ジョウユウ:賓満(ひんまん)。赤い眼。首の下に身体がなく半透明のゼリー状のものが纏いついている
クラスメイト
杉本:いじめられているクラスメイト
森塚:クラスメイト
出会った人たち
達姐(たっき):五曾で出会った碧眼の中年女性
松山誠三:海客の老人
山で会った母娘:飴売りの行商。娘の名はギョクヨウ
妖魔
蠱雕(コチョウ):巨鳥。茶色い翼に毒々しい色合いの曲がった嘴、角と太く鋭い鉤爪を持つ。
ゴウユ:猪に似た獣
バフク:人の顔を持つ巨大な虎のような獣
賓満(ひんまん):戦場や軍隊に出る妖魔
何者か不明
蒼猿(あおざる):薄蒼い燐光を放つ猿
金髪の女:二十代半ばの女性
オウム:金髪の女とともにいる色鮮やかなオウム
用語
海客(かいきゃく):虚海の東からやってくる来訪人
蝕(しょく):嵐のようなもの
里(り):距離の単位。数百メートル
盧(ろ):田圃で働く者が住む集落。陽子には村(むら)と聞こえていた
里(り):近辺の人が冬の間に住む街。陽子には里(さと)と聞こえていた
郷(ごう):県より一段階広い区分
県正:陽子には県知事と聞こえていた
銭:通貨単位。硬貨、紙幣はない
郷城:陽子には郷庁と聞こえていた
白い木:樹皮は純白、一軒ほどの大きさで葉はなく、細く堅牢な枝持つ。樹の下は妖魔や野獣が襲撃してこない
サトリ:人の心を見透かすという妖怪
地図と地名
地図
地名
配浪(はいろう):淳州符楊郡(じゅんしゅうふようぐん)、盧江郷槇県配浪(ろこうごうしんけんはいろう)
虚海(きょかい):崖の向こうの海
巧国(こうこく):巧州国とも言う。十二国のなかの南東の国
五曾(ごそ):淳州にある
慶国(けいこく):巧国の隣の国。国が乱れている
河西(かさい)
戴国(たいこく):北に位置する。国が乱れている
拓丘(たっきゅう):郷庁(郷城である拓丘城)がある街。
バクロウ
設定のポイント
- 十二の国がある
- 一つの国は東西に端から端まで歩いて三ヶ月かかる
- 隣の国に行くには海や山を越えて四ヶ月かかる
- 神や仙人が存在する
- 王は神の一族
- 仙人は王が任命する
- 国の偉い人や王宮で働く者は仙人
- 妖魔は猛獣のようなもので特定の人物に狙いを定めて襲うことはない。本来人里にはあまり出てこない。また本来昼には出てこない。国が乱れると妖魔が現れる
- 緑の柱は女郎宿
- 海客は国によって扱われ方が異なる。巧国では捕らわれ、慶国では戸籍をもらえる
- 慶国は国が乱れ、女王の命により女が追い出された
『月の影 影の海』(上)感想・考察
『月の影 影の海』(上)の感想や考察をネタバレありで自由に綴ります。
そもそも陽子はなぜ連れてこられたのか
日本で平凡に暮らしていた陽子ですが、ケイキによって突然異界へと連れてこられてしまいました。
ケイキにとって陽子は重要な人物であり主人であるらしいのですが、
「私としてもこんな主人は願い下げだが、こればかりは私の意のままにならない。主人を見捨てることは許されない。(省略)」
などと言っており……、主人に対して随分失礼な発言ですね!(笑)
しかしこの発言によって、どうやらケイキは自分の意思で決めたわけではなく、決められたルールや指示に従って動いているようですね。
それにしたって、これまで異世界で暮らして陽子がなんで突然主人になるんですかね?
一ヶ月前に見始めた夢と関係があるのでしょうか?
陽子の様々な変化
おとなしく、人の顔色を伺いがちで、唯一目立つ点が地髪が赤っぽいということくらい……という生命力や存在感の希薄な感じの陽子でしたが、異界につれてこられ、まず外見が変化しました。
髪の色、眼の色、肌の色、顔の形、手。
それから、なぜか異界の言葉が翻訳されているという現象が起こります。
また、当初は心細そうにしていて(そりゃそうだ)、保護してくれる者を疑わないようなところのあった陽子ですが、まさかの達姐に裏切られ、松山にも裏切られ……とうとうこの世界に自分の味方はいないという境地にまで達しました。
加えて、剣の幻影と猿によって元いた世界にすら陽子の居場所はないのだと気付かされる。
それでも帰るという想いに希望を見出し、なんとかこらえた陽子は本当に強くなりましたね。
最終的に倒れ込んでしまいましたが、それでも。
ケイキと下僕はどこにいるのか
ところで、あんなに強引に陽子を連れてきたケイキはどこで何をしているのでしょうか?
最終的にどうやら妖魔を差し向けていたのは金髪の女の方だったようですが、
じゃあケイキは?
カイコは?
ヒョウキは?
ハンキョは?
ジュウサクは?
揃ってどこに行ってしまったのでしょうか? 謎です!
金髪の女とオウム
なぜかオウムに逆らえない金髪の女。
彼女の下僕の妖魔を差し向けていたということでしょうか?
妖魔は本来狙いを定めない、人里に出てこない、昼間は出てこないらしいのですが、ケイキの下僕の妖魔は飼い犬のようによく慣らされているのでそんな感じなのでしょうか?
死んでしまった妖魔を見て泣いていましたし。
とどめを刺すことは免れたものの、とうとう陽子の手を刺しましたね〜。
しかしこのオウムと金髪の女は何の目的があって陽子を狙っているのですかね?
命令してくる偉そうなこのオウム、なんなんですかね?
剣と蒼い猿
ケイキに渡された剣は、この世界で陽子を守る唯一のものであると同時に、幻影を見せ陽子の心を乱す。
蒼い猿は陽子が絶望すると現れ、陽子の隠された不安を暴き、陽子を挫けさせようとする。
この剣は一体どういうものなのか、この猿はなぜ陽子のもとに現れるのか。
謎です!
倒れ込んだ陽子の今後
怪我と飢餓、体力の回復のないままに戦い続け、雨に打たれ続けた陽子。
とうとう限界に達し、倒れ込んでしまいましたね。
ーーどこに帰るつもりだったのだろう。
待っている人などいないのに。陽子のものは何一つなく、人は陽子を理解しない。騙す、裏切る。それにかけてはこちらもあちらも何の差異もない。
ーーそんなことは分かっていた。
それでも陽子は帰りたかったのだ。
完全に諦めの境地です。
一周回ってすでに穏やかな悲しみが伝わってきますが、このまま死ぬわけにはいかない。
何とか立ち上がってくれ〜というところで上巻が終わりました。
こんな状況と心境から、どうやって陽子は巻き返すのでしょうか?
下巻も楽しみですね!
最後までお読みいただきありがとうございました!