この記事では、
平野啓一郎『マチネの終わりに』の
あらすじや感想について書いています。
『マチネの終わりに』は2015年から2016年に
毎日新聞とnote上で連載された長編小説で、
第2回渡辺淳一文学賞を受賞した作品です。
2019年秋には、
西谷弘監督、福山雅治・石田ゆり子主演で映画の公開が予定されています。
この物語の著者・平野啓一郎さんは
京都大学在学中に『新潮』に『日蝕』を投稿し、
この作品が1999年に芥川賞を受賞しました。
華々しいデビューを飾り、
その後もさまざまな賞を受賞しています。
私はこれまで平野さんの作品を読んだことがなかったのですが、
義母のおすすめの作家であり、
今回の映画化でヒロインを務める石田ゆり子さんが
好きな作家としてあげていたので読んでみることにしました。
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『マチネの終わりに』のあらすじ
天才ギタリストの蒔野聡史と
通信社に勤めるジャーナリストの小峰洋子が出会い物語は始まる。
初めての出会いのときから二人は強く惹かれあい
日本とパリという距離があるなか、
その想いはそれぞれに強くなっていく。
ただしそのとき、
蒔野は音楽家としての岐路に立ち、
洋子はフィアンセがいて、
自身の仕事上の問題で体調に悩まされているときでもあった。
それでも二人はパリで再会を果たし美しい時間を過ごす。
やがて二人の美しい恋は、
ある出来事をきっかけにその形を変えてしまう。
二人の恋の行方は…。
蒔野や洋子をとおして、
音楽的な話、文学的な話、国際・民族・社会問題までをも含んだ
知的で美しい大人のラブストーリーです。
『マチネの終わりに』感想
ここからは感想を書いています。
ネタバレなしバージョンと、ネタバレありバーションがあるので、
まだ読んでいない方はご注意ください!
また、私が感じたことを素直にそのまま書いているので、
その点も併せてご注意ください。
『マチネの終わりに』感想(ネタバレなし)
切ないけれど、読んでいたくなる物語だと思いました。
世界観であったり、主人公の二人であったり、
音楽についての描写であったり、美しい文章と世界が溢れています。
人の持つ醜さや、弱さも描かれていますが、
それでも読後の印象はやはり美しい物語を読んだなという感じ。
また、ただのラブストーリーとしては扱いたくないような、
奥深さがあります。
それは蒔野の音楽に向き合う際の語りであったり、
洋子の国際問題を見る目や、リルケの詩の扱い方など。
簡単にいうと大人の恋愛小説。
だけど簡単には言いたくない部分をたくさん含んだ
知的な恋愛小説だなと思います。
平野啓一郎さんのその他の作品を紹介
芥川賞受賞作
芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作
Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作
⇩この下の感想、ネタバレありなので注意してください⇩
『マチネの終わりに』感想(ネタバレあり)
この二人の5年半を見ていると、
恋を成立させるものってなんだろうと考えてしまいます。
こんなにも惹かれあい、
一緒にいないときですら想いは強まり、
一度はパリで再会し、あんなにもお互いの想いが深まったのに。
あの時点では、
二人は完全には手を取り合って歩いていないような気がします。
手を取りあって歩いていきましょうと確認しただけ。
そのふわふわとした関係性に、
早苗とリチャードが入ってきてしまう。
この物語で、一時的であるにしろ恋が成就したのはリチャードと早苗。
その姿を見て恋愛の難しさを強く感じます。
自分と相手の気持ちを、
場合によっては雑に扱っているかのような
一方的な想いや欲求に、
純粋な二人の想いが勝てない…。
繊細だから勝てないけれど、
決して無くなることもない。
無理やり紡いだ関係は破綻する可能性があるけれど、
新たな命という存在で、形を変える可能性もある。
恋を成立させるのに、
傲慢さや我儘であることは欠かせないもののように思えます。
それから自分のプライドを捨ててしまうことも。
最後のシーンで、
二人は再会を果たしますが、
このあと二人はどうなっていくのでしょうか。
そこは読者に委ねられていますが、
子どものことはあっても
今度こそ二人には同じ道を歩んでほしいと思ってしまいます。
最後までお読みいただきありがとうございました。