川越宗一『熱源』|人が生きる熱、文明的であることの意味

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川越宗一『熱源』の表紙写真

こんにちは、楓*です♪

この記事では、川越宗一さんの『熱源』についてご紹介しています。

明治から昭和にかけて日本とロシアの間で揺れるサハリン(樺太)を舞台に、時代に翻弄されながらも懸命に生きた人たちを描いた史実に基づく壮大な物語です。

『熱源』は第164回直木賞受賞作であり、2020年本屋大賞にもノミネートされたため、どの書店でも平積み状態で、コンビニの本のコーナーに置いてあるくらいの人気作となりました。

私もその話題性により読んでみたくなったひとりなのですが、実際に読んでみたところ受賞やノミネートも納得の素晴らしい作品でした。

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以下にあてはまる人には特にオススメの作品です♪

  • 壮大な冒険物語が好きな人
  • 明治から昭和にかけての日本の歴史に興味がある人
  • アイヌの文化に興味がある人
  • 帝政ロシア末期に興味がある人
  • 『ゴールデンカムイ』にハマっている人

 

↓目次から見たい箇所へ飛べます↓

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『熱源』作品の情報

公式サイトの情報をまとめています。

『熱源』は壮大な物語で、舞台が転換したり時代が変わったりします。

どんな雰囲気の作品なのか触れてから読むと、すんなり物語の世界に入っていけるかもしれません♪

公式サイトの情報

書名(カナ) 熱源(ネツゲン)
著者(カナ) 川越 宗一(カワゴエ ソウイチ)
出版社 文藝春秋
ページ数 432ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2019年08月30日
公式サイト

『熱源』川越宗一|単行本‐文藝春秋BOOKS

第162回直木賞受賞! 川越宗一『熱源』 各紙激賞! 話題沸騰の歴史冒険小説。|特設サイト‐文藝春秋BOOKS

 

公式サイトでの作品紹介はこんな感じでした。

樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。

樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、
国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、
読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

引用:『熱源』川越宗一|単行本‐文藝春秋BOOKS


直木賞受賞の際の各委員のコメントもありました。
浅田次郎さんや角田光代さんなど、著名な方々からのコメントには興味がそそられますよね。

近年まれにみる大きなスケールで小説世界を築き上げている。
――浅田次郎氏(直木賞選考委員)

民族に優劣などない。価値観は異なっても、互いに関わりあうことで、人の強さは生まれる。
――角田光代氏(直木賞選考委員)

重たい題材を、ときにユーモラスに、ときにスリリングに語って、読者を離さない。
時代の中で、私たちは多くを失い、変化させざるを得ないが、何かをとどまらせる意思を持つのも、人間だけなのだと小説は熱く訴えてくる。
――中島京子氏(「毎日新聞」2019年10月13日より)

日本とロシアという二つの帝国に翻弄され、同胞と引き裂かれた二人の男。遠く離れた地で生まれた彼らの人生が国境の島で交錯し、読み手の心に静かな熱を生む。
――梯久美子氏(「文藝春秋」2019年12月号より)

引用:第162回直木賞受賞! 川越宗一『熱源』 各紙激賞! 話題沸騰の歴史冒険小説。|特設サイト‐文藝春秋BOOKS

 

著者の川越宗一さんは2018年デビューとのこと。年齢も40代なのでこれからが楽しみですね。

1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。京都市在住。龍谷大学文学部史学科中退。2018年『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。短篇「海神の子」(「オール讀物」12月号掲載)が日本文藝家協会の選ぶ『時代小説 ザ・ベスト2019』(集英社文庫)に収録。19年8月刊行の『熱源』で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第162回直木賞受賞。

引用:第162回直木賞受賞! 川越宗一『熱源』 各紙激賞! 話題沸騰の歴史冒険小説。|特設サイト‐文藝春秋BOOKS

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『天地に燦たり』はデビュー作で第25回松本清張賞受賞作品だそうです。
華々しいデビュー…すごい才能を持つ方が現れましたね!

『熱源』のあらすじやポイント

ここから『熱源』のポイントとなる人や事柄についてピックアップし、あらすじを紹介しています。

極北で生きるアイヌ ー ヤヨマネクフ

この本の主人公で、樺太で生まれたアイヌ。

『熱源』は金田一京助が「あいぬ物語」としてまとめたヤヨマネクフの生涯を軸に描かれている。

子供の頃、樺太がロシアのものとなった際に和人たちとともに北海道へわたった。

しかし、大人になりある出来事により樺太に戻る決意をする。

戻った故郷もやはり文明と大国に翻弄されていた。

「私たちは滅びゆく民と言われることがあります。」

そこでヤヨマネクフが進んだ道とは。

国と言葉を奪われたポーランド人 ー ブロニスワフ・ピウスツキ

生まれたときから祖国を奪われ、ロシア皇帝暗殺を謀った罪により極北の地へおいやられる。

そこで同じように他国や文明によって翻弄される人たちと出会う。

「ぼくは、あななたたちに興味がある。あなたたちのことを教えてほしい」

 

「ぼくはブロニスワフ・ピウスツキ。あなたたちを形作ったもの、あなたたちにこの凍てつく島で生きる熱を与えたものが何かを知りたて、ここへ来た」

 

彼らの生き方・暮らしについて細かに記録するような活動を続け、民俗学者として深く彼らと関わっていくことになる。

しかし、ロシアと日本が開戦し、ポーランド独立運動も盛んになり、彼の新たな故郷、かつての故郷は大きく揺れていた。

ロシアと日本とサハリン(樺太)

時代によりロシア領のときもあれば、日本が南半分を領有していた時代もある。

北方少数民族のアイヌ、オロッコ、ニクブンが、その地で古くから伝統的な暮らしをしている。

時代に翻弄され、文明に迫られる

文明の持つ力が、少数民族たちを取り込もうとする。
文明的な産業と教育、それらを得たときにそこには誰が残るのか。

文明的であることの意味とはなんなのか。
人が生きるには文明的でなければならないのか。

キーワードは熱

タイトルにもあるように、という言葉や、寒さなど反対の言葉がこの作品のキーワードとなっています。

登場人物たちがどんなときに熱や暑さを感じて、どんなときに寒さを感じたのかに注目して読むと、登場人物たちの生への想いがより伝わってくるように思います。

 

『熱源』を読みやすく

ここから『熱源』をより読みやすく、より楽しめるように、登場人物や気になった言葉などをまとめています。

人物紹介

実在の人物にマーキングしています。

対雁のアイヌ

ヤヨマネクフ(山辺安之助):樺太出身のアイヌ。幼少時に樺太から北海道・対雁(ついしかり)村に移住

シシラトカ(花守信吉):樺太出身のアイヌ

千徳太郎治:ヤヨマネクフ、シシラトカの幼なじみ。和人の父とアイヌの母を持つ

キサラスイ:対雁村でいちばんの美人と呼ばれる女性。五弦琴(トンコリ)の名手

チコビロー:対雁村に住むアイヌの頭領で、ヤヨマネクフの親代わり

樺太のアイヌ

バフンケ:樺太・アイ村の頭領。数か所の漁場を経営する実業家でもある

チュフサンマ:バフンケの姪。流行病で夫と子を失う

イペカラ:バフンケの養女。亡き母から譲り受けた五弦琴を弾くことを好む

ポーランド

ブロニスワフ・ピウスツキ:ポーランド人。ロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリン(樺太)に流刑となる

アレクサンドル・ウリヤノフ:ブロニスワフの大学の先輩で、革命思想の持ち主。レーニンの実兄

ヴァツワフ・コヴァルスキ:ロシア地理学協会の会員。アイヌの民族調査のため北海道を訪れる

ユゼフ・ピウスツキ:ブロニスワフの弟で、兄に連座してシベリアに流刑。後のポーランド共和国初代元首

ロシア

アレクサンドラ・クルニコワ:ソヴィエト連邦軍の女性狙撃兵。階級は伍長

日本

金田一京助:東京帝大の学生(後に助教授)。アイヌ語の研究をしている。親友に石川啄木

白瀬矗(シラセ ノブ):陸軍中尉であり、探検家。世界初の南極点到達を目指す

大隈重信:明治の政治家。1898年憲政党を結成し板垣退助と隈板(わいはん)内閣を組織。1914年第2次内閣を組織し、第1次大戦に参戦

引用・参照:第162回直木賞受賞! 川越宗一『熱源』 各紙激賞! 話題沸騰の歴史冒険小説。|特設サイト‐文藝春秋BOOKS

気になった言葉

五弦琴(トンコリ):アイヌに伝わる伝統的な弦楽器

和人(シーサン):日本人

オロッコ:ウイルタ。サハリンに住む人たち。トナカイを飼う

ニクブン:ニウブ。当時はギリヤークとも。サハリンに住む人たち。犬橇(ぞり)を駆る

木幣(イナウ):丸木の肌を薄く削って房を作った祭具

ナロードニキ:人民のなかへ(ヴ・ナロード)を掲げた革命運動

 

地理

アナログな地図ですみません!(笑)

ブロニスワフの故郷であるポーランドがいかに遠いか確認したいなと。
ユゼフはシベリアに流刑となりましたが、シベリアは広いですね……。

『熱源』広域MAP

日本から見たこの頃の樺太の領有について

日魯通好条約 1855(嘉永7)年
当時自然に成立していた択捉島とウルップ島の間の両国国境をそのまま確認。樺太は実効支配。

樺太千島交換条約 1875(明治8)年
千島列島をロシアから譲り受けるかわりに、ロシアに対して樺太全島を放棄。

ポーツマス条約 1905(明治38)年
日露戦争後のポーツマス条約において、日本はロシアから樺太(サハリン)の北緯50度以南の部分を譲り受ける。

サンフランシスコ平和条約 1951(昭和26)年
ポーツマス条約で獲得した樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄。
*北方領土については北方四島の帰属の問題でロシアと現在も交渉しています。

引用・参照:北方領土|外務省

『熱源』感想

極北の地で生きる人々が放つ、生きることを選んだ際にまとう熱や、ほとばしるエネルギーが美しく、激しく描かれていてすごく面白い作品でした。

また、今を生きる私たちが葛藤してしまうような考えさせられる内容でもありました。

異なる文化や言葉をもつ人、伝統的な暮らしをする人たちを、文明的でないとして支配しようとする傲慢さに胸が痛くなったり、それでも自分たちらしく生きていこうとする人たちに心打たれたり。

このお話は、私の知っているアイヌの人たちが主人公となっていますが世界中至るところで見られることだと思います。

進化することだけにとらわれず、権利ばかりを主張せず、ありのままで自然や伝統とともに生きる人たちの価値観を片方の勝手な枠組みで壊したくないと強く思いました。

『熱源』、素晴らしい作品でした!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

楓*

楓*

主婦 兼 校正者

東海地方に住む主婦で校正者の楓*です。
趣味を満喫すべく本や映画の感想、登山の記録を綴っています。
日々の暮らしが楽しく快適になるようなモノ・コトも探しています♪

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