真に持続すべき社会の形とは?|人新世の「資本論」

3 min
『人新世の「資本論」』書影

*記事内に広告を含む場合があります。

斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読みました。

「新書大賞2021」受賞作であり、昨年もっとも話題となった本のひとつです。

夫が先に読んでいて家にはあったのですが、昨今の急激なちょっと首を傾げるようなSDGsという言葉の使い方に疑問を感じた私は、夫が教えてくれたこの本の「はじめにーSDGsは「大衆のアヘン」である!ー」という強い言葉に引きつけられ2021年から2022年の年末年始にかけて読んでみることにしました。

人新世の「資本論」|作品情報

著者は大阪市立大学の准教授、斎藤幸平さんです。
2022年1月8日現在で34歳と若い方です。

斎藤幸平(さいとう こうへい)

1987年生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。

Karl Marx’s Ecosocialism:Capital,Nature,and the Unfinished Critique of Political Economyによって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初歴代最年少で受賞。編著に『未来への大分岐』など。

人新世の「資本論」 – 集英社新書

各所で話題となっている本書ですが、公式HPには紹介とともに様々なジャンルの方の感想が載っていました。
下に引用します。

【「新書大賞2021」受賞作!】

人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。

気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。

それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。

いや、危機の解決策はある。

ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。

世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!

【各界が絶賛!】

■佐藤優氏(作家)

斎藤は、ピケティを超えた。これぞ、真の「21世紀の資本論」である。

■ヤマザキマリ氏(漫画家・文筆家)

経済力が振るう無慈悲な暴力に泣き寝入りをせず、未来を逞しく生きる知恵と力を養いたいのであれば、本書は間違いなく力強い支えとなる。

■白井聡氏(政治学者)

理論と実践の、この見事な結合に刮目せよ。

■坂本龍一氏(音楽家)

気候危機をとめ、生活を豊かにし、余暇を増やし、格差もなくなる、そんな社会が可能だとしたら?

■水野和夫氏(経済学者)

資本主義を終わらせれば、豊かな社会がやってくる。だが、資本主義を止めなければ、歴史が終わる。常識を破る、衝撃の名著だ。

人新世の「資本論」 – 集英社新書

人新世の「資本論」|感想

新年早々、興味深い1冊を読みました。

この本では環境問題や社会問題から資本主義の矛盾や問題点を一つひとつ挙げていき、結論として資本主義を続けていては根本的な解決はなされず、もはやSDGsやグリーンニューディールなどを行っても、このままの価値観に基づく生活を続けるのは難しいとしています。

資本主義で豊かになるポイントは希少性をもたせること。
また、商品としての価値があること。

生きていくうえで必ず必要であり、潤沢にあるものですら共有しない。
安価な公共の利益になるものよりも、公共の利益にはならないが高額なものが優先される。

たくさんの問題点のなかで特に印象に残っているのがこの2点なのですが、確かに無駄な生産をしてGDPを伸ばし続ける方向性の社会に未来はないのではないかということは、うすうす感じている人は多いと思うし、私もその一人です。

こんなに便利な世の中になって、昔に比べて生産性が上がってないわけがないのに、ホームレスの人はいなくならない。貧困国の飢餓の問題もなくならない。

この調子でSDGsに取り組みながらGDPを伸ばすことを目指しても、一部の人にますます社会の中にある無駄な富が集中するだけで、誰もがその一部の人を目指すことが前提の、そこから漏れれば自己責任となる社会に持続する意味はあるのかなと。

共有する、GDPの上昇を目指さないという言葉からは、緊縮で清貧的なイメージを持ってしまうけれど、本来分割したり商品にしなければ、社会のなかで豊かに維持していけるものを、富めるもののみ持てるような形にしてしまったわけで、そうしなければだれもが豊かな恩恵を受けられる。

また、商品化しなければ見かけ上はGDPに影響しないので、数字としては下がるけれど、今まで見捨てられ、切り捨てられていた人たちが人間らしい生活ができるようになる。

こういった価値観のほうがどう考えてもこれからの世界には合っているのだろうなと思いました。

ただし、どんなに良い面のあるやり方でも、社会のシステムを変えるということは想像できないくらいの難しさだとは思います。

清き一票ではなされない、政治を超えたスピードで市民が変えなければ、システムは権力者のシステム維持の方向になってしまうし、為政者主導ではただの社会主義になってしまう。

潤沢なコモンを持つ自治的な脱成長コミュニズム。
世界はこの方向に移行できるのか。

楓*

楓*

主婦 兼 校正者

東海地方に住む主婦で校正者の楓*です。
記録しておきたい日々の出来事や思い出、整理しておきたことなどをブログに綴っています。
旅・山・自然が大好きで、趣味は読書と映画・ドラマ鑑賞です。

FOLLOW

カテゴリー:
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です